思えば1989年のマルタ会談で東西冷戦が終結するまで、ソ連の恐怖は世界に影を落としており、空母ミンスクがたびたび対馬海峡を通過して日本の平和を脅かしていましたが、マルタ会談と時を同じくしてベルリンの壁が崩壊し、東欧の共産主義国家が次々と崩壊し、西側諸国はグローバリゼーションの旗印の下で平和を享受してきました。一方でグローバリゼーションと共にコンテナによる物流革命が進み世界中から一番安い物が手軽に買える状況で、輸送費が下がったことで先進国の地場製造業は勢いを失っていきました。
「経営者へのメッセージ」を更新しました_2024年1月
昨年の令和5年は、引き続き世界の構造が大きく軋んだ1年でした。ウクライナへのロシア侵攻は膠着状況となった一方で、ガザ地区ではイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘が勃発し、中国は領土拡大の圧力を引き続き強めています。イエメンのフーシ派による紅海での商船攻撃が発生し、1956年のスエズ動乱に匹敵する影響すら生じる可能性があります。
冷戦に敗北したソ連は崩壊しロシアと名前を変えましたが、2014年のクリミア危機の頃から失地を回復しようとEUに対し牙を剥き始めました。同時に中国はグローバリゼーションに伴い世界の工場となって国力を急速に増加させていきました。日本に脅威を与えてきた空母ミンスクをスクラップとして買い取って空母運用の研究を進める一方、ウクライナで旧ソ連の未成艦として係留されていたヴァリャーグを買い取って空母遼寧として完成させて以降、東シナ海や南シナ海で海洋進出の牙を剥き始めました。具体的には台湾への武力侵攻を仄めかす発言を繰り返して極東の情勢を不安定化させています。中露が同時に息を吹き返した今、まさに東西冷戦構造が30年近くの時を経て復活しています。
この30年、日本を支配してきたデフレの動きも止まり、円安と原材料価格の高騰でインフレへと大きく風向きが変わってきています。業績が回復する企業も増加する中、人手不足が賃金上昇圧力となって中小企業の経営の大きなファクターとなりつつあります。
思うに、30年前のバブル崩壊はインフレからデフレへの局面の変化により起きた事象であり、株や土地の時価が大きく下落することで企業も個人も資産状態が悪化しました。当時の日本と酷似した状況が中国で起こりつつある点は気になりますが、日本ではこれからデフレからインフレへの局面変化が起きます。局面が変わった時には今までと同じことを続けること自体がリスクになります。デフレの時代においては判断が遅ければ時間の経過とともに価格が下落することでメリットが得られたこともありますが、インフレの時代においては判断が遅ければ機会を喪失したり傷口が拡大したりと良いことがありません。経営者は30年以上前のインフレ時代のマインドを思い出す必要があります。
また、新年1月1日に日本中を震撼させた能登半島地震は、我が国における天災のリスクを思い起こさせるに十分過ぎるものでありますが、識別したリスクへの対応策を考えるのは経営者の任務です。リスクの中で活動しながら、リターンを得ることでしか組織は活動することが出来ません。そんな中で会計事務所にはレーダーとしての役割があります。レーダーがあることでパイロットである経営者は状況を客観的に把握しつつ目的地を目指すことが出来るのです。
私たちは経営者の皆様を支えるべく高度で高品質な専門性の研鑽に努め、クライアントのニーズに合ったコンサルティング技法を十分活用し、皆様の事業経営が成功されますよう支えることをお約束いたします。